会社の軒下にハクセキレイが巣を作ってた。
そのあたりを片付けようとしてたけど、巣の中に卵が5個あるのを見つけて
作業を中断した。
親鳥が卵を温めているのに何度も遭遇した。
と、いうかわざわざ覗きに行った。
あっという間に雛が孵り、親鳥がえさを運ぶ。
気づくと親鳥は二羽。大き目のほうがオスだろうか。交代でえさをやってる。
俺が巣に近づくと、近くで見ていたのだろう、親鳥が近づいてくる。
鳴きながら俺の注意を引こうと必死だ。
いつの日か、メスらしき小さな親鳥が片足を不自由にしてた。
左足が人間で言うところの踵だけになってる。
カラスにでも突かれたのだろうか。それでもけなげにえさを運ぶ。
巣に近づくと相変わらず親鳥は鳴きながら俺の近くまで飛んでくる。
雛たちは親鳥に教えられたのだろうか、俺が近づくとじっと巣の中でうずくまるようになった。
俺は巣を離れ、親鳥に近づく。親鳥は歩きながら逃げ、一定の距離を保つ。
飛んで逃げてしまおうとはしない。巣に近づかないように、気をそらそうとしているのだ。
でも、自分もそんなに強くない。立ち向かおうとはしない。
ただ、「巣に近づくな、それ以上そっちへ行くな」と、遠くから叫ぶことしか出来ない。
何度か、えさを運んでいて巣に入ろうとする親鳥に遭遇したことがある。
その場で黙ってみていると、親鳥は口にくわえたえさを自分で食べてしまった。そして鳴く。
俺に向かってなのか、巣にいる子供達に向かってなのか。
子供達を守ろうと必死なのだ。
しかし、巣を襲う者に攻撃を仕掛けることはない。自分もけして強くないから。
もしも、自分よりも強い奴が巣を襲おうものなら、何も出来ず見守っているだけなのかもしれない。
もう意地悪はやめよう。
巣に近づかないようにしよう。セキレイは成長が早い。
まもなく巣立っていくだろう。
それまで、近くのカラスを追い払ってあげよう。出来るだけ。
片足の不自由な母鳥を見かけなくなった。
もしかしたら・・