巣のほうからにぎやかな声がした。
ふと、何の気もなしに巣に近づいた。
びっくりしたのだろう、親鳥がバタバタと飛び出した。
ヒナたちも飛べるようになっていたのだ。
びっくりした親鳥につられて、バサバサと巣から飛び出してしまった。
色がまだはっきりしない灰色の小鳥。産毛(っていうの?)で覆われている。
低空飛行をしている。
もう巣には戻れないだろう。
てんでに散らばってしまった。
親鳥が俺を責めるかのように、俺のほうに向かって鳴き散らす。
「ごめんよ、まさかみんな飛べるなんて思ってなかったし」
心の中で言い訳する。
なんか、ろくに親に挨拶もしないでそれぞれが好きな方向へ巣立ってしまった、
そんな感じ。人間なら親不孝者か。
・・・・・親鳥が立ちすくんでいる。
遠くのほうだが、その親鳥の近くのアスファルトにはなにやら模様めいたものが。
いやな予感がした。
近づいてみる。
・・・・・・いやな予感が的中。・・・・・哀しくなった。
内臓が真っ赤だった。
かろうじて口ばしと脚が原型をとどめている。
灰色の柔らかそうな毛。
巣から飛び出して10メートルも低空飛行していないうちに車に轢かれたのだ。
親鳥がまだそこにいる。
俺は会社に厚紙を取りに行った。
厚紙に死体を載せ、近くの草むらに横たえる。せめて土に返してあげよう。
親鳥が鳴く。
「お前のせいだ。お前が来なければこんなことにはならなかった」
そういわれている気がした。
哀しかった。
巣立った子供達。
カラスなんかに狙われなければいいが。