「納棺士(納棺師?)」という言葉はない、と聞いたことがある。
今頃になってみた映画、おくりびとの劇中にただ一度だけ出てくる。
「夫は納棺師なんです」
本人が自己紹介しているわけでもなく、その名称で呼ばれる職業として
映画に出てきたわけではない。
30年前に女を作って家を出た親父が納棺されようとしているときに、
そのぞんざいなやり方に腹を立て、納棺しようとした男たちの手を振り払い、
「何をするんだ?」といぶかしげられた場面で妻が言う。
(日本語合ってる?)
つまり、劇中で妻が自分の夫を紹介するときに、誇らしげに、
また夫の仕事を認める意味も込めて、夫に聞こえるように人に言ったセリフ。
この映画で何度も泣いた。
五分遅れてきたことに怒っていた夫が、納棺が済んだ妻の亡骸に泣いてすがりつくシーン。
銭湯のおばちゃんの棺に火が入るのと同時に杉本哲太が「ごめんよ」と泣き出すシーン。
硬直した峰岸徹の手をほどいた時に小さな石ころが転がり落ちるシーン。
ぼろぼろ涙がこぼれた。
どうも、人が死ぬのってのには弱い。
よく出来たコメディだと思う。
みんながみんな綺麗な遺体なわけがないと思うけど、この映画を観て
「納棺師」という職業にあこがれる気持ちもわからなくもない。
現実はこんな綺麗な仕事じゃないと思う。
朝晩関係ないだろうし、事故死の遺体なんてまともに見れないと思う。
でもこの映画はよかった。よく出来たコメディだ。
この映画に出てた余貴美子のことが気になって、調べてみた。
過去の仕事として、あるレコードのジャケット写真の仕事をしていた。
・・・・そこにたどり着くとは思わなかった。
甲斐バンド、「TORIKO」
3枚のフィルムを重ね合わせると出てくる女。それだった。