すこしかじり虫

多趣味で結局無趣味。なんでも中途半端。そんな性格の人が書いてるブログです。

大震災

ランタンとストーブ

その日は公休だった。
城東の自動車学校の方のツタヤにいた。
立ち読みをしていた。
揺れを感じ、天井を見上げた。
煙の拡散を食い止める、天井からぶら下がった
ガラスのアレが揺れている。
隣の客が「地震じゃないか?」と問いかける。
持っていた本を棚に戻し、「揺れてる」と
天井を指さす。
足早に店を出る。
電気はついていた。
車まで歩く間、ずっと揺れていた。
長い。
揺れが長い。
時化の船の中を歩いているようだ。
車に乗ってもまだ揺れている。
会社に電話。
通じない。
部下の携帯電話にかけてみる。
通じない。
会社のアドレスにメール。
駐車場ではみんなが足早に建物から離れていく。
一人の女性が店の外壁に背中を押しつけて立っている。
歩くことが出来ないでいるのだろう。
テレビをつける。
揺れた瞬間のテレビ局内を映している。
車を走らせる。
裏口から撫牛子方面へ。
踏切で立ち止まった。
踏切が鳴りっぱなし。
しばらくの間。
・・・おかしい。
立ち往生した車の中ではUターンするものもある。
電車が一向に来ない。
近くのアパートの敷地を使ってUターンした。
とにかく家に帰ろう。
信号機がついていない。
ここで初めて停電を知った。
交差点を慎重に走らせる。
どの信号機も点いていない。
なるだけ交差点が楽に走行できるルートを考えながら
家路を急ぐ。
電気がついているようなところはない。
何かが起こっている。
家も停電していた。
テレビでは仙台空港の空からの映像。
土砂で埋もれた滑走路。
津波だった。
とんでもないことになっている。
長引く。
停電はすぐには復旧しないと直感した。
家族が「カップラーメンとか買っておけばよかった」
と言う。
よし、わかった。
ケースで買ってきてやる。
と、車をまた走らせる。
・・・どこもやってない。
佐藤長、サンワドー、いとく・・・・。
家に帰り、家族に告げる。
「今晩、会社に泊まり込む」
火と戸締りに気を付けるように、と伝え、
出来る限りの着替えと
LEDの懐中電灯、コールマンのガスランタン、
防寒具をバッグに詰め、
車に乗り込む。
車で1時間はかかるところだ。
はたと気づき、水を1ケース積み込む。
道中何があるかわからない。
くれぐれもろうそくの扱いに気を付けるように
言いきかせ、家を出発。
通勤に使っている道路が、
見慣れた道路が、
なんだか別のもののように思える。
大鰐鯖石の交差点では警察官が信号機に
発電機をつないでいるところだった。
会社が停電だと、セキュリティが無効となる。
誰かが残らないと危険だ。
・・・俺が残るしかないだろう。
そう決意して車を走らせる。
一晩で済むかどうか・・・・